「Webの媒体で書いてくださる人を探しているんです」
そうおっしゃっていただいて、ありがたく打ち合わせをメール・SNS・カフェなどで進めるのですが、ご依頼いただく側が何を伝えてよいかわからないからか、一つ一つ確認しなければならないケースがあります。
少なくともこのくらいの項目を最初にご連絡いただければお互い時間のロスなく打ち合わせられるのにな。
そう思ったことがままあるので、その項目をまとめておくことにしました。文末に一覧表へのリンクを用意してあります。
Web媒体でライターさん・ブロガーさんに依頼しようとされている方のご参考になれば幸いです。どのみち後から確認する項目でもあるので、一覧で渡した方が簡単だと思うんですよ。
「おいおいこの項目足りないよ」というのがありましたら優しく教えて下さい。必要に応じて追記します。
~ 目次 ~
メディア情報
まず、掲載される媒体がどのようなものかを教えてくださらないと話が始まりません。
- 媒体名
- URL
- キャッチフレーズ・コンセプト・概要・メディアのミッション
- 対象読者
- 求める専門分野
このくらいの内容を頂けるとありがたいです。特にメディアの概要やミッション、対象読者というのは長く続けるためには大切な項目で、例えば47歳の僕に10代女子のトレンドの記事を依頼されても本当に困っちゃうんです。まあ依頼されたことはほとんどありませんけれど。
書く側としては、マッチするから書こう!って発想と、マッチしないけれど新ジャンルの開拓のつもりで頑張ってみよう!という理由で書くことになるとは思うのですが、もし依頼側が
「あなたのこれまでのトーンとは違うとわかっていますけれど、これまでの執筆経験を生かした新たなこれに挑戦してほしいです」
と言われたら頑張りたくなっちゃいますよね。その編集の方は自分の過去の実績を見てくれているということにもなりますからね。
これから立ち上げるサイトならコンセプトやターゲットを明確に
これからサイト・メディアを立ち上げる、という状況なら、コンセプトやターゲットを明確にするのが大切です。どんなサイトか書き手は知りようがないので、そこをしっかり伝えることが最重要ポイントと考えるべきです。
求める専門分野
依頼内容に専門性が必要な場合には、どのような専門性が必要なのか、または依頼する対象者がどのような専門性を持っているから依頼したのか、ということを書いておくと良いです。
依頼された側は自分の求められたポイントが分かるので、それも判断材料になります。
依頼範囲
ここがしっかりしていると書き手が判断しやすいです。これらの項目を確認するのにメールで何往復もすることになるから効率が悪くなる、ということはあります。
- トンマナ
- 文字数
- 入稿ペース(週1記事とか、月1記事とか)
- 入稿方法
- 記事イメージ
- 企画立案の有無?
- 取材の有無?
トンマナは忘れられがち
僕の経験だけかもしれませんが、トンマナについて指定を忘れられることはままあり、よく「どんなトンマナですか?」と確認しています。
トンマナとは…。
「トーン&マナー」
のことです。主にデザイナーさんに使われる言葉ですが、ライターにとっても文体(解説っぽいとか、語りかける風とか、語尾が「だ・である調」か「です・ます調」か、とか)の指定をもらっていた方が良いにきまっていますよね。
メディア毎にトンマナが決まっているケースもありますし
「ライターの個性を活かしたメディアにしたい」
とあえてあまり作っていない所もあります。
トンマナがある場合にはまとめた資料を作り、URLでシェアできると優しいですね。
入稿方法
記事の入稿についてもメディアによってやり方が違いますね。WordやGoogleドキュメントで文章を作り、ファイルやリンクの転送で済ませたり、WordPressのようなツールに直接稿したりするケースがあります。
画像に関しても送信するケースとシェアするケースと、システムで入稿するケースとありますね。
ライター側としてはシステム入稿も受けられるように、WordPressの操作くらいは知っておいた方がいいかもしれません。依頼側は、ライターによってはシステム入稿のやり方を知らないという人もいるため、場合によってはシステム操作説明書があるといいでしょう。
記事イメージがあると判断しやすい
「例えばこんな感じの記事です!」
といっていただけると、ライターは本当にイメージが掴みやすいものです。
企画立案ははっきり
連載物に関しては、企画立案を誰が行うのかを明確にしてくれると嬉しいです。
「ネタシートを共有してやっていきましょう」
みたいな書き方だと、ネタを作るのがだれかがはっきりしていないから△。
指定したネタについて執筆をお願いします。
ネタ案を出していただき、妥当と判断したものについて執筆をお願いします。
この差はまあまあ大きいと思います。ライターさんによってはこれの有無で単価が変わるケースも。
写真の有無も大切
写真撮影が求められるかどうか、どのレベルで求めているのかは、最初にはっきりしていただけるとありがたいです。
デジタル一眼レフでの写真が必要です
スマホの写真でも大丈夫です
不要です
みたいなことが分かれば、手持ちの機材に応じて受ける、受けないの判断もできますし、原稿料に対する作業量の軽重も判断できます。
なお、インタビュー系の取材で一人で行き、写真も撮るとなると、現場は本当に大変。
質問して回答に対するメモを取りながら話している写真を撮るって無理なので、一通りの取材が終わってから雑談しつつ写真を撮る、みたいなことをしなければなりません。
「ちゃちゃっとついでに撮ってきてよ」
ていうのは本来勘弁してほしくて、ちゃんとした依頼項目の一つであると考えてほしいです。
なんたって、本来必要なカメラマンの人件費を一人分節約してライターに業務依頼するんですからね。
カメラマンの感性がないライターになんて金払えるか、みたいなのは残念だからやめてくださいね。
取材があれば書き手の負荷は増える
取材有無に関しては
- 取材対象は誰が決めるのか
- アポイントは誰がとるのか
を明確にしてください。ちなみに取材が発生するばあい、普通に見積もっても書き手には
- 取材対象の勉強時間
- 往復の移動時間
- 往復の移動交通費
- 実取材時間
- 文字起こしの時間
と作業項目が増えてきます。依頼慣れしていない方ですと
原稿料って「文字単価〇円」の交渉でしょ?
って思うかもしれませんが、全然そんなことはなくなってきます。
ついでに依頼するレベルのものではなくなってきます。
お仕事に関するもろもろ
せっかくほかの条件が面白そうなのに、話を進めた最後にこの条件が満たされないからお仕事NG、というケースはお仕事できない残念感も、打ち合わせの時間を無駄にした感もたっぷりです。最初に話せるのがベストですし、誠意を感じられることと思います。
- 原稿料(消費税税込み?税抜き?源泉徴収?)
- 請求タイミング、支払いタイミング
- 原稿料以外のもろもろ費用について
原稿料は本当に早めに出していただきたいです。
取材の有無や文字数、そのほかの条件次第で受けるか、前向きに調整するか、お断りするかの判断が早くできます。
早くできるというのは書き手だけの問題ではなく、依頼側も素早く次の候補者に連絡がとれるということにもつながります。
請求と支払い時期は分かりやすく
大きくは請求タイミングと入金タイミングに分かれるのですが、それぞれ注意が必要。
例えば6月28日に入稿して7月1日に記事が掲載された場合、翌月末の入金だとしましょう。
「入稿月の月末に請求、翌月末に入金」
ですと、6月請求の7月31日に入金となります。
「掲載月の月末に請求、翌月末に入金」
ですと、7月請求の8月31日入金となります。
キャッシュフローを考えるならこの差は無視できません。ただどちらが正しいかは一概に言えません。
入稿月に請求できるのであればライターは助かり、メディア側はちょっと不利になります。
例えば入稿された原稿が著しく不出来なものであった場合、差戻や事実確認、修正などに大きな時間と手間がかかってしまうこともありますよね。もしかしたら6月入稿でも掲載が8月になるということだってあり得ます。それでも7月に入金しなければならないとしたら、いやそれはどうなのよ、ってことにもなるでしょう。
入金タイミングですが、翌月〇日のケースと翌々月〇日、のケースが一般的には多くみられます。紙媒体などでは出版後、というケースもあり、支払いタイミングがもっと遅くなる可能性もあるかもしれません。
ライターさんにとってはとても重要な事項の一つです。これを明確に最初から表記してくれるメディアは、例え今回の依頼でNGが出たとしても、引き続き依頼をしやすくなるという効果もあるかもしれません。
原稿料以外の費用について
仕事をしていると「経費」が発生するものです。その確認と、ほかの作業に関する費用がどうなるかを考えましょう。
さすがに消耗品は請求しにくい(そういう費用はそもそも原稿料に乗ることの方が多いかな)ので、
- 交通費
- 取材費
を中心に考えてみましょうか。
取材や打ち合わせがある場合、交通費が発生しますよね?これを請求できるかどうかを明記して欲しいですし、受託側は忘れずに確認すべきです。
取材費というのは、例えばグルメ取材であれば飲食費。イベント取材であれば入場料や参加費、たまに取材対象に対する謝礼などがあるかもしれませんね。まあそういう費用をどちらがどう持ってくれるかが最初から分かってないと辛いです。
僕は原稿料に飲食費が込みのグルメ取材をして食べ過ぎ飲み過ぎ(もちろん残さずきっちりレポートしましたよ)、結果的に赤字になったことがあります。飲食費込みは分かっていたのである種確信犯ですが、もし事前にそれを知らされていなかったらちょっとした事件になるでしょう。
企画は仕事かサービスか
連載ものの場合、企画を立てることが執筆とは別の作業として認められるかどうかは馬鹿になりません。企画を立てるためにはリサーチをし、メディアのターゲットとの親和性を考え、キャッチコピーはリード文的な入り口を考え、それを一覧にします。
その作業は決して小さいものとは思えません。
企画費込みの執筆料と言われた場合にはその額が妥当かどうかをきちんと検討しましょう。その原稿料には「没になったネタを考えた時間」も含まれます。それ込みでの原稿料と意識できれば、企画の出し方も変わってくるかもしれませんしね。
SNSでの情報拡散は「必須」か
執筆者自身がSNSでメディア掲載の情報拡散をすることが必要かどうか、それも明記してくれると嬉しいですね。
拡散の必要があるのであれば、記事掲載時に連絡をいただけるような運用になっていることも大切ですしね。
Webメディアであれば情報拡散はありがたいはずなので、ぜひこれを「別途依頼事項」としていただければライターは泣いて喜びます。多くのフォロワーを持つライターさんなら、下手すると執筆料よりも高くなるかも(笑)
ただし、すべてのWeb系ライターが拡散力を持っているわけでもありません。相手を見て項目を考えてください。
ライター情報の掲載は人によってはインセンティブだ
記事の最後に「この記事を書いた人」みたいな感じでライター情報が出せるかどうかを教えていただけると嬉しいです。Webで名前を売りたいライターにとってはあると嬉しい項目ですし、そうでない方は「いや結構です」って話かもしれません。
人気メディアの場合には「そこに名前が出るなら」と、少な目の原稿料でも受けてくれる書き手がいるかもしれません。
ライター情報が掲出されることは、一部のライターには大きなインセンティブとなりうることを知っておいてください。ただしそれを原稿料を下げる道具にはしないでください。せつないですから。
執筆物の著作権など
名前が出ない文章で、その媒体の記事量を増やすのをヘルプするような仕事の場合があります。とうぜん自分の名前も出ない。
そうしたときにはライターの著作権って放棄しちゃってもいいかなと僕は思います。
でも、名前が出るような文章であれば著作権・著作者人格権の放棄って基本的に考えられないし、それを奪おうとするのって何?って思っちゃうことがあります。
著作権はライター側にありながらも、その媒体の広告宣伝などの理由で転用するよ、といった条項を加えることで現実的には対応できますからね。
あなり契約書的な堅苦しい読解に悩む文章じゃなくて、著作権の帰属と、こういう際には許可無く使いたい、ということをあらかじめ言っていただけると助かります。
やりとりの数を減らし、スムーズな契約を
最後までご覧いただきありがとうございました。確認項目の一覧へのリンクを貼っておきますので、コピーしてご利用になってください。
必要十分な情報がきちっと入り、一回目の提示で判断材料が揃うのは依頼する側・される側双方にとってメリットが大きいものです。
依頼側としては、断られた場合には次の候補者に短時間で当たれます。承諾された場合にも詳細・例外条件の詰めだけで済みます。
依頼の受け手としても、判断基準がはっきりしますし、受諾にしても断りにしても、それまでの時間やメールを打つ時間を軽減させられますね。双方が得できるんですね。
気持ちよく契約できると一発目の記事掲載に向けて、ライターもひときわ頑張れるでしょう。その結果良い記事にも繋がりますよ。どうか最初の依頼の時から考えてみて下さい。
メールでもSNSでも、これらの項目がわかりやすく表現されていたら好感度間違いなしです!