ボクシング観戦が好きな@odaiji さん曰く、。
2016年9月16日、ボクシングの長谷川穂積選手がメキシコのウーゴ・ルイスに9回終了TKO勝ち(9ラウンドが終了し、10ラウンドのゴングの前に相手が棄権したことによる勝利)し、実に約5年半ぶりに世界のベルトを巻きました。00年代の日本ボクシング界のエースだった長谷川選手は2010年4月30日にフェルナンド・モンティエル選手にTKO負けしてから苦難の道が続き、一度は世界タイトルを取ったものの往年の輝きを見せられずにいました。
その長谷川選手が再び世界タイトルを取ったことに、長いスパンと短いスパンの「諦めない心」を感じたのです。
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バンタム級の王座陥落、階級変更
バンタム級で10度の防衛を誇っていた長谷川選手は、試合のたびに減量苦に悩まされていたと聞きます。ただし、その時の長谷川選手はWBCのバンタム級王座を10度連続防衛。世界のボクシングでは話題の人同士がぶつかり合うビッグマッチが重視されるのに比べ、日本では同じタイトルの連続防衛が重要視されています。そんなこともあり、長谷川選手は減量苦と戦いながらも防衛を続けていました。
その状況が変わったのが、11度目の防衛戦となり、WBOという団体との統一戦とも言われていたフェルナンド・モンティエル戦です。
この試合で長谷川選手はTKO負けを食らい王座陥落。減量苦もあり、リミットの体重が3.5キロ重いフェザー級まで2階級上げることを決意しました。体脂肪一桁のボクサーがウェイトを絞るのは本当に大変、ということで、一つ上のスーパーバンタム級でなく、リミットが3.5キロ近く重いフェザー級まで一気に階級を上げたのですね。
フェザー級で大苦戦
それまでの実績からから、フェザー級への転向第1戦で、早くも空位となっていた王座をかけて、他の世界ランカーとの王座決定戦を行うことになった長谷川選手。見事判定で勝利して飛び級での2階級制覇を成し遂げました。
しかし初防衛戦で、かつて西岡利晃選手と戦いKO負けを喫したジョニー・ゴンザレス選手に4回TKO負け。ボクシングは単なる強弱でなく、じゃんけんの関係のような相関関係があることもあるので、これをもって単に長谷川選手が西岡選手未満の選手と位置づけることはありませんが、このあとの長谷川選手はいまいち精彩を欠きます。
その後、日本には知られていない選手と3試合行い4戦4勝3KOを記録しますが、見た目以上に「フェザー級では体格が小さいのか、パンチ力が通じにくいんじゃないのかな?」と素人目に感じさせました。
そうこうしている中、スーパーバンタム級に1階級落として2014年4月23日に世界挑戦。
そこでは7ラウンドにTKO負けを喫してしまいました。覇者だったバンタム、飛び級で2階級制覇を成し遂げたフェザーの間にある階級・スーバーパンタム級での3階級制覇は達成できませんでした。
長期的な「諦めない心」
新聞報道では家族からも引退を勧める声があったと聞きます。それでも長谷川選手は止めませんでした。
2015年には再びフェザー級で1戦、次はフェザー級より1階級重いスーパーフェザー級で1戦。ともに判定勝ちを収めたもののスーパーフェザー級の試合では序盤にダウンを奪われるなど大苦戦。なんとか盛り返しての判定勝ちでした。
この頃、国内のボクシングファンでも
「長谷川、もういいよ」
「よくやったよ」
「もう休めよ」
と思っていたボクシングファンは多かったのではないでしょうか。しかし長谷川選手はフェザー級の王座から陥落して以降、ボクシングを諦めませんでした。周りの勧めは関係なく、自分で決めた意志を貫き通していたのです。
そして、短期の「諦めない心」で3階級制覇を成し遂げる
そして2016年9月16日、ふたたびスーパーバンタム級に体重を落としてウーゴ・ルイス選手に挑戦します。ウーゴ・ルイス選手はかつて亀田興毅選手と戦ったこともあり、知っている人もいるかもしれませんね。
試合は9回に動きます。
ルイス選手が1発いいパンチをあててチャンスを掴み、ハセガワ選手をロープ際に追い詰めます。そして猛ラッシュ。
普通の日本人だとここで防御一辺倒になったりして、なかなか良い反撃を見せることができません。
しかし、長谷川選手はルイス選手のパンチをときには食らい、ときにはかいくぐりつつゴツゴツとカウンターを当てていくのです。このラッシュで諦めなかったからこそ、ハセガワ選手に勝機が巡ってきました。
ロープを背負ってラッシュを受けているはずの長谷川選手の体が、少しずつ前に出ていきます。リング中央まで押し戻したときにはルイス選手のダメージが目で見て取れるようでした。
その後、9ラウンドが終了したところでルイス選手が棄権したのです。ロープ際でラッシュを受けていたときの長谷川選手の反撃が、ルイス選手の心を折るほどのダメージを与えました。
諦めるも諦めないも本人次第
バンタム級の王座を失ってからの長谷川選手は順風なボクサー生活を遅れていませんでした。
長谷川選手が苦闘している間、日本のボクシング界には井岡選手、宮崎選手、山中選手、内山選手と様々なスターが現れます。相対的に長谷川選手のポジションは後退していきました。
でも、長谷川選手は諦めません。
今回世界タイトルを奪取した一つ前のスーパーフェザーでの試合。この試合も序盤にダウンをもらってから、頑張って得意の左カウンターで立て直し、判定勝ちをつかみ取りました。
3階級制覇を成し遂げた今回の試合でも、戦況を逆転させたのは右ジャブ・左ストレートと続くワンツーをうまくカウンターで当てることで、攻撃する相手にダメージを蓄積させていきました。
パンチをもらってロープに追い詰められラッシュを受けた時、ボクシングファンなら9年前のモンティエル戦を思い出したかもしれません。あの時は倒れてダウン判定されれば体制を立て直せたかもしれないのに、倒れずに頑張ってしまったから決定打をもらってしまったんですよね、確か。
しかし今回、似たような局面から反撃して前向きに打開した心の強さを見せ、モンティエル戦でのトラウマまで払拭したかのように映りました。
ボクサー人生でも試合でも「諦めない心」と「カウンターパンチ」を駆使して長谷川選手は今、再び花を開かせたのです。
周囲の評価ではない。自分自身のやる気、続ける気持ちを維持して、再び戴冠したのです。
僕達はついつい他人の評判や評価で自分の行動を決めてしまいがちなもの。楽な方に寄って行き、ジャッジしてしまいがちなもの。楽かどうかではなく、自分の夢・目標を基準にジャッジしていくことでチャンスを掴み取れることを長谷川選手から学ばせていただきました。