背景@odaijiです。
武雄市長とmalaさんがほぼ同時期に「高木先生、しっかりしてください」に近いタイトルのブログエントリーを公開し、これがセキュリティや個人情報保護に興味のあるユーザーから注目を浴びております。
武雄市長は「ひろみつ先生 しっかりしてください」
malaさんは「高木浩光さんへ しっかりしてください」
というタイトル。時系列的にmalaさんは武雄市長のエントリーをもじったのですかね。内容は全然異なっているのですけれど。
まず、佐賀県武雄市長の樋渡さんと高木さんのバトルから。
〜武雄市長と高木さんのバトル〜
武雄市長物語 のエントリー
ひろみつ先生 しっかりしてください
こちらからは武雄市長が如何に高木さんを嫌いかが伝わってきます。
ただまあ、市長さんがエンジニアである訳でもなく、高木さんへの個人的嫌悪や不満さを感じる文章です。
武雄市長の樋渡さんは、Twitterは2ちゃんねるレベルになっていると感じつつも高木さんとTwitter上で激論を展開、
「国会議員に報告するぞ!」武雄市長がツイッターで一般人にブチギレ
のまとめを見る限り、国会議員へ報告するぞ、とか、経済産業省の上層部の人と本件について語るなど、政治家としての動きを全開、高木さんを「潰し」にかかっているかのよう。
「しっかりしてください」というタイトルとは裏腹に、個人に対する嫌悪感しか伝わってきていないのが残念といえば残念ですね。
これを受けて高木さんは、この政治家としての動きを「脅迫」として受け止めつつあり、この問題はTo Be Continueというところなのだと思われます。
〜情報セキュリティについても様々な指摘を行ってきているmalaさんが高木さんに苦言〜
一方。
最速転職研究会のエントリー
高木浩光さんへ しっかりしてください
こちらからは、エンジニアとして高木さんの「暴走」を諌める気持ちが伝わってきます。
過去の高木さんの指摘のなかから過ちであろうと思われるものを取り上げ、
ーーここから引用
* 間違い、勘違いで書いたのであれば、より大きな声で訂正情報を流してください。
* 間違った情報を根拠にして、個人や企業を批判したのであれば、その部分についてはきちんと謝ってください。
* 真摯にセキュリティやプライバシーのことを考えている、技術者に対して、彼らの努力を無に帰してしまうような真似をしないでください。
* より良い未来を作ろうとしている技術者が軽蔑されるような世界を作らないでください。
* 正しい知識を広めようとしている人間に対して、レッテルを貼ったり、黙っていろなどと言わないでください。
ーーここまで引用
として、高木さんの対応に対する改善を求めています。
別に、高木さんは技術に対して誠実な人間だと思っている、とも書いています。個人のプライバシー侵害に関して社会に警鐘を鳴らしている高木さんの活動に対して一定の評価をしつつも、過去の訂正や暴走に関しては許しがたいんだよ、ということを仰っているのでしょう。タイトル通り「しっかりしてください」という、改善に向けてのほのかな期待を感じられるような気がしています。
この件に関しての高木さんの反論などは現時点で確認できておらず、今後の動向が気になるところです。
〜世間のコメント〜
さて、これら一連の騒動について著名ブロガーのやまもといちろうさんが所感を述べられています。
やまもといちろうBLOG
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2012/08/post-0197.html
輝ける高木浩光氏とスーパー武雄市長・樋渡啓祐氏の戦い普段のやまもとさんのタッチ通り、斜め上から争いを眺めていらっしゃいますね。
どちらのバトルも、「どっちもどっちでしょ」とおっしゃってます。
また、
ガジェット通信のエントリー
武雄市長樋渡啓祐がちらつかせた国会議員の影によって高木浩光が沈黙した件についての所感
では、高木さんの激情型の性格を分析しています。そして、武雄市長の「ちらつかせ」によって高木さん自身のコメント数が減っていることを指摘しています。
〜高木さんを囲む環境の変化〜
これまで高木さんは、自らが感じる良心をもとに各団体・企業・個人に警鐘を鳴らし続けてきました。警鐘の鳴らし方としてはかなりジャンジャンと激しく鳴らすタイプで、指摘された側がグウの音も出ないような追い込み方をされていることが多かったように思います。公に激しく反論されている例もあまり見られなかったようにおもいます。
それが最近、武雄市長の激しい抵抗に遭い、malaさんからは痛烈な批判を浴びてしまいました。
ご本人としても「これはいったいどうしたことか」と思っていることもあるのかなと思います。
物事には表と裏があり、一人の人間は良いことも悪いことも行う。これは自然の摂理だと思いますし、仕方の無いことだと思います。
ただ、もし、誰かが暴走して、それを他の誰かが止められるのであればそう動いて貰いたいものだなあとも思うわけです。
〜こうあってもらいたいなあ〜
プライバシー情報の漏洩やその指摘方法について何が適切なのか、の判断はまだ確立していないでしょう。例えばもし高木さんがTwitterなどで指摘した「あなたの会社は個人情報をだだ漏れさせてますよ」という情報が間違いだったとして、これが名誉毀損や威力業務妨害になるか、法の世界にここまでさばける人たちがいなさそうな気がします。
Web関連の一定以上の技術を持ち、法律に明るく、思想が偏っていない複数の人間が話し合うことが求められるからです。
また、法律作成の対応も遅れていることでしょう。上記の理由で正しく法律を作成できる人もいなさそうな気がするのです。
今回武雄市長とmalaさんの高木さんに対する痛撃を述べましたが、高木さんが声を大にすることによってプライバシー情報の保護が大切だということを世間に知らしめている功績の一面もあるし、高木さんのすべてを否定するのはちょっと違うなというのが僕の全体的な感想です。
また、この問題を法や政治で裁くのは現時点では大変不適切だと思っていて(そういう意味では武雄市長の権力ちらつかせは禁じ手だと思います)、malaさんのような技術的拝啓を持つ方々がネット上に集まって侃々諤々、オープンな場所でやりあってもらって改善に向かって進めていくのがいいと思うのですけれど。
オープンな場所で、技術的背景を持ちながら、今回の件に関しては多くの専門的知識を持つ人たちの意見交換をしてもらえるのが一番だなあ。そして、これまで事実上、高木さん一人が担っていたプライバシー情報漏洩の危機を、より多くの人が発信できる情報セキュリティの世界になってほしいなと、「一情報の受け手」として切に願います。