僕が高校生の頃だった31年前、自宅から徒歩圏内にできたラーメン屋さんの影響で、環七には路上駐車の自動車がたくさんできて1車線が潰れ、そのお店の半径何十メートルかは煮込んだとんこつの香りがぐわっと漂っていました。
骨の髄まで博多たい、というキャッチフレーズで話題になったその店は、東京でとんこつラーメンを広め「ハリガネ」「粉落とし」といった麺の硬さの指定を僕に教えてくれたのです。
そのお店「なんでんかんでん」は環七の渋滞解消のために近くの駐車場と契約し、駐車場への誘導をするスタッフが毎日働いくようになりました。カウンターだけだった店内はやがて拡張し、テーブル席でお酒を楽しめるようにもなったのです。
とある年の元日の夜、早くもおせち料理に飽きてしまった僕はなんでんかんでんを訪れ、その場にいらっしゃった川原ひろし社長に焼酎をごちそうになったりしたものです。
川原社長、多くの人にとっては「マネーの虎で知った、人気ラーメンチェーンの社長」だったんじゃないですかね?でも僕にとっては「行きつけのラーメン屋の社長がテレビにも出た」って感じです。テレビでの言動よりも、お店で接客し、常連さんと語らい、新規のお客さんを招き入れ、気さくに写真撮影にも応じる。そんな川原社長の立ち居振る舞いは少年期から青年期の僕ですらラーメンに対する愛情やお客さんを大切にする気持ちが伝わってくるものでした。言葉で何か教えてもらったことはないけれど、学んだことはたくさんあるなあ。
今思い返せば、とんこつラーメンの驚きを知り、辛子高菜の辛味に目覚め、酒の〆にラーメンを食べる習慣が身についたのも全てこのお店でした。ある意味僕は、なんでんかんでんに大人にしてもらい、男にしてもらったようなもんです。
そんななんでんかんでんが代田の地を去ったのは2012年11月。当時ブログを始めて半年のころだった僕は、
なんでんかんでん新代田本店の突然の閉店にショックを受け、地元最後の味を噛みしめる - 明日やります
こんな記事を書いて悲しんだものです。
その後、別のエリアでお店を出した際には行くこともできず、いつしか全店閉店になってしまっていたなんでんかんでん。それが突如、2018年9月に東京・高円寺に店舗を構えたというニュースを聞きました。
知ったからには行かずにはいられない。
6年前に離れたあの味に再会しに、お世話になった川原社長に会いに、ヤマハ発動機さんにお借りしているトリシティ155を駆って高円寺を訪れたのです。
~ 目次 ~
なつかしの看板、店外で接客してる社長
高円寺駅の南側、アーケードの一番駅よりの一等地に新しい「なんでんかんでん」はありました。店の外には数脚の椅子があり、その近辺で川原店長が旧知と思われるお客さんと談笑しています。いまだにお店の広告塔として動いておられるの、純粋にすごいことだなあと思います。
って語る川原社長は、まるで一週間ぶりくらいで会った友達のような気さくさ。どうぞどうぞと促されてお店に入ります。
赤が基調のお店のデザインが懐かしく、外連味たっぷりで川原社長の写真が飾られているのも記憶を呼び覚ましてくれます。
久々の一杯はノーマルなラーメン
さてさて、メニューを見てみることにしましょう。
おお。バカシリーズも健在だ。たまごバカラーメンはたしかうずらの玉子が何個も何個も乗ってるんだよな。のりバカは岩のりが乗ってたっけ(うろ覚え)。麺の堅さは、柔らかめの選択肢が少し少ないかもしれない。
久しぶりに頼むのは、昔からよく頼んでいた、普通のラーメンで麺の堅さは「粉落とし」。とんこつラーメン、麺は粉落としで注文しました。ああ、あの時の麺にもうすぐ出合える……。
程なくしてラーメンが到着しました。
おお、長く慣れ親しんできたラーメンが、6年振りに自分の目の前に……。なんでんかんでんのラーメンって分かっちゃうなあ。
久しぶりの一杯目は何の調味料もかけずにいただきました。スープは自分の記憶よりも濃厚でこってり度が高い気がしました。しかしこれはこれで、慣れ親しんだ味を思い出す気がします。
撮影していた分柔らかくはなりましたが、麺もあっという間に口の中に吸い込まれていきます。もう嬉しくって、最初の方は?むのと飲むのの間くらいの勢いで食べ続けてしまいました。
中程でようやく落ち着いた僕は麺をしっかり?むことを思い出し、小麦の甘みを引き出します。その甘みと濃厚スープのバランスはすばらCの一言。感動ですな。
替え玉と薬味を楽しむ
そうしてあっという間に一杯目を食べ終わり、替え玉を一つ。到着の間にニンニクとごまをたっぷりと投入して準備完了です。
そうそう。すりごまをドカンと入れるのも、なんでんかんでんの楽しみの一つでした。
ああ、2杯目もあっという間に終わってしまいましたよ。懐かしい味が戻ってきているので、頭で考えて味わうのではなく、心で味わっている気がしました。あっという間に2杯目も食べきり、辛子高菜と紅ショウガをつまんで終わることにします。
若いころは替え玉2つめ(トータル3杯目)、3つめとかは行けた気がしますけどね。今は気合いが入ってるときで替え玉2つだ。
辛子高菜を食べて思い出した。この辛さ中心で味付けを控えめにしている辛子高菜は、まさに昔の味。こりゃあ懐かしいなあ。紅ショウガも美味しくいただきました。
辛子高菜、スープに浸しながら食べるのも好きだったし、スープを終えてから高菜だけ食べるのも好きだったのを思い出しました。
豚骨ラーメンにしては珍しくスープまで全部いただいてしまいました。6年ぶりのなんでんかんでんの一杯は珠玉の一杯でしたわ。
川原社長は元気
食後、久しぶりに川原社長とお話を。お客さんが来ると案内をするのに途切れたりもしますが、高円寺のアーケートを歩いている人たちから
「お、社長!久しぶり!」
「え、なんでんかんでん再開したんですか!?」
などと声をかけられ、明るく答えている姿は昔から変わらず。また声のハリも素晴らしくて元気そうの一言です。
以前の店舗や近隣のお店の昔話を一通りしてお別れしましたが、精力的にお客様に話しかけるバイタリティを持つ、変わらない社長に嬉しくなったひとときでした。