2019年の初日にこのブログを書いています。今年、4回目の年男です。次回の年男は還暦かあ。
2018年の年末に目にした二人のおじさんの立ち居振る舞いが、とても印象に残りました。ご紹介するとともに2019年の目標としつつ世の中のおじさんと共有したいなあと思い新春の言といたします。
~ 目次 ~
若手と研究会を開催し成績を向上させた56歳のプロ棋士
復活する光速流 谷川浩司九段が語る羽生、藤井、「君たちは悔しくないのか」発言の真相 | 観る将棋、読む将棋 | 文春オンライン
将棋の谷川浩司九段は56歳。14歳でプロ入りし21歳で名人位を獲得した早熟の天才でもありながらタイトル通算27期獲得、日本将棋連盟の会長も務めた文字通り将棋界の顔です。
とはいえ将棋界は実力社会。40代後半となった2010年に11勝18敗という大きな負け越しを記録したあと、2017年まで年間勝利数20を切る状態が続いていました。最も勝利を重ねた1985年が56勝だったことを考えると、対局数や勝利数など外野からみたら「衰えたな」と思ってしまっても不思議のない数字です。
ところが2018年、谷川九段は20勝15敗という戦績を残します。なぜそのようなV字回復の成績を残したのか、といったことが記事に書かれていました。
20代の若手と研究会を開催
谷川九段は2017の5月から、20代の若手、しかもタイトルホルダーらと将棋の研究会を開始しました。そのうちの一人は自分の弟子の棋士です。
最新流行型について、タイプのそれぞれの違う彼らがどのように考えているのか、どのようなアイデアを持っているか知ることはすごく勉強になります
この言葉自体を抜き出してみると普通の勉強家の言葉に過ぎません。
が、
・14歳でプロ入り
・21歳で名人位獲得
・各種タイトル獲得
・表彰もたくさん
・日本将棋連盟会長も経験
した56歳の人の言葉としてみたらどうでしょう?僕が56歳になったとき、いやいや今でも、こういう姿勢で若い人と一緒に研究を重ねるということができるものでしょうか。
偉ぶらず、卑屈にもならず、世代にこだわらず、力を付けるために適した人と勉強を重ねる。
今年やりたいことの一つとなりました。
20歳の野望を完膚無く叩き潰した41歳のレジェンド
大晦日の総合格闘技イベント「RIZIN」のメーンイベントは生放送、およそ23時半くらいに行われました。対戦したのはボクシングで無敗のまま5階級制覇を成し遂げたあと一線を退いたフロイド・メイウェザー選手(41歳)と日本のキックボクシング界の神童・那須川天心選手(20歳)。
日本で無敗と高いKO率を誇る那須川選手が、かつては1試合で何十億円ものファイトマネーを稼ぎ、世界中のあらゆる強豪を相手に50戦無敗という戦績を残しているボクシング界の最高傑作の一人でもあるメイウェザー選手にどこまで迫れるか、というのが注目の試合でしたが、そもそも体重や本職となる競技ルールが異なるため、ルール調整などに難航。
なんやかんやありましたがとにかく実現した日本人にとってはドリームカードのメイウェザーvs那須川戦。ルール的にもボクサー有利、メイウェザーのこれまでの対戦相手を知っている人であればこのルールでメイウェザーが負けることはあり得ないというマッチメイクではありましたが、動くメイウェザーが日本で見られたというのは、RIZINを生観戦した人がうらやましくなるような出来事です。
【RIZIN.14】那須川天心がフロイド・メイウェザーにTKO負け 「もう怖いものはない」|ニフティニュース
この記事では那須川選手は
試合前は「本気でいけると思っていた」
だけに、何もできずに3度のダウンを食らってのTKO負けはさぞかしショックだったでしょう。
何もさせずにノックアウト勝利
41歳のおじさん・メイウェザーは最初、テレビカメラ越しでも分かるニヤニヤした表情を浮かべながら子どもを相手にするかのようなサークリング。緩慢な動きでスローなパンチのそぶりを見せ、エキシビション感をフルに出しています。
開始48秒、那須川選手が左ストレートをパチンと当てました。そこからメイウェザーは「エキシビションモード」からほんの少しだけギアチェンジ。ガードを高く上げ、ボディは打たせても顔面には当たらないスタイルでプレッシャーをかけていきます。
そして1分6秒。メイウェザーの左のフックが那須川選手の右側頭部を捉えて那須川選手はダウン。立ち上がった那須川選手は反撃を試みますが、固いガードで顔面を打たせないメイウェザーが1分44秒、右のスマッシュを左側頭部にたたき込んで2度目のダウンを奪いました。程なくして3度目のダウンを奪取し那須川陣営がタオルを投入。KO直後から泣き崩れる那須川選手を尻目にダンスを踊り始めた余裕の勝利を収めたのです。
若者から「慢心」の芽を摘み取る
試合後にメイウェザーは「これはエキシビションであり、いまだ那須川選手は無敗のままだ」とコメントしていましたし、RIZINの実行委員長の榊原氏も興行後の記者会見で「これは『競技』ではなかった。メイウェザーとやれるというチャンスを掴んだという試合」という趣旨のコメントをしています。
しかし、負けて号泣する那須川選手から伝わってきたのは、真剣にこの一戦に取り組み、そして夢叶わなかった人間の悔しさです。
これまでキックボクシング・総合格闘技のルールで敵なしだった神童は競技こそ違えど、本物の世界の一級品の態度・雰囲気・オーラ・圧力を知りました。この先、那須川選手がどの競技に進んで誰と戦うかはわかりませんが、20歳の年の大晦日で「負けた」悔しさをきっと忘れることはないでしょう。そしてこの悔しさは彼から慢心の芽を摘み取ったに違いないんです。これって最高の教育じゃないですか。
若い人から学び、若い人に教える
谷川九段は若い人と研究会を開催することで最新技術を学び、年齢に関係なく日々向上を目指す姿勢を見せてくれました。
メイウェザーは圧倒的な経験と実力を那須川選手に見せつけることでボクシングや「世界」のすごさを身を以て伝え、さらなる成長を促しました。
両方の姿勢とも、おじさんが若い人に対して取りたい素晴らしい姿勢です。僕の2019年は、こういうおじさんになれるよう研鑽を積んでいきたいなあと思った次第です。まずは自分が成長せんと!