フリーランスがクライアントと仕事をする際に欠かせないのが「受注」「納品」「請求」「入金」です。当たり前ですが、依頼主から発注があるから仕事をし、仕事を終えて納めるから請求ができ、請求ができたからお金を入金してもらえます。
こうやって単語だけ抜き出してみると簡単ですが、これはもう少し細かく考えてみないと思わぬトラブルの元になります。
請求したのに入金のタイミングが翌月じゃなくて翌々月だったとか、納品したのにチェックが終わっていないから一ヶ月ずれるなど、請求と入金の支払いタイミングは金に関わることなので、フリーランスにとっては死活問題。このタイミングについては最初の仕事を請ける前にきちんと決めておくことがトラブル軽減の元になりかねません。
正しく決め事をしておくのは、決して依頼側のためでも受託側のためでもありません。両方が気持ちよく仕事をするためにすることです。トラブルが起らないよう、どういうタイミングの違いがあるかを自分の経験を元にお話します。
~ 目次 ~
何月時点での請求かを確定させる「請求月」
多くの会社は月単位で請求や支払いを行っています。企業によっては当日払いや、請求書到着次第すぐ支払いというところもあり、それは本当にありがたい存在なのですが、月単位で回している会社が多いでしょう。
こうしたときにポイントになるのが「請求月」の取り扱いについてです。
何月時点で請求したものとする、というルール決めの時には以下2つ+1の形態が多くを占めていると思います。
納品月
何はともあれ、制作物を先方にきちんと納めた日時の月に相当するもの。
相手が受領を確認したというよりは、こちらがきちんと納品出来ていればその日付が納品日となります。ですので、どのような形でも
電子的に納品できるものであれば、一般的にはその月の営業日内に送信手続きが取れていれば、自動的に受領日も同じになりますので問題ありません。
宅配するなど物理的に納品するものであれば、やはり到着日が納品日となるので、月末などに送付する場合には早めの対応が必要になりますね。
ただ作業的には、受領したからといって向こうのチェックが終わっている訳ではありません。引き続き作業が発生する可能性はあります。
納品月を請求月にできるのは、作業する側としては「事前払い」「当日払い」などに次いでありがたい請求タイミングになります。いくらタイミング的に恵まれているからといって、未完成なものを場当たり的に月末に間に合わせるのは、その月だけはどうにかなったとしても、あとで仕事を失います。よく考えて丁寧な作業をするようにしましょう。
検収月
検収月が支払いタイミングになる場合は、納品日に関わらず、検収が終わった日付をもって請求できる月とする、ということです。検収というのは納品物のチェックのこと。お願いしたものが適切なレベルでできあがっているか確認し、満足いったら「検収完了」。そうでなければ改修を依頼して満足いく出来に仕上がってから、ということになります。
例えば6月25日に納品が終了して検収が7月1日だったとします。この場合「納品月」の請求ができるのであれば請求日は「6月30日」(末日請求の場合)、「検収月」の請求であれば「7月31日」(末日請求の場合)となります。
状況によっては1ヶ月ずれることがあります。
検収月の請求というのは、依頼する側にメリットが大きいスタイルです。成果物に満足がいった時点での支払いの責任が発生しますからね。
作業する側としてはこれだけの約束でやってしまうと延々と修正を要求されるリスクがあるため、以下の二つの制限を契約書に盛り込む必要があります。
「致命的なミス・障害で無い限り修正対応は納品後○回まで」
「受領後○日後までに修正依頼が無い場合は検収OKと判断したものとする」
これを入れることによって、納品した後に過度な修正を行う必要が無くなります。僕の体験であれば、納品後の修正対応は2回、自動検収OKになるための日数は長くて10営業日といったところです。10営業日はほぼ半月なので、実際は5営業日くらいにとどめたいところですね。
僕はライターをしていますが、修正に関してはもう少し踏み込んで話すことがあります。
それは
語尾をちょっと変更するような修正や、段落単位で入れ替えたり段落を削ったりするような修正の場合には編集側でやってしまっていいですよ
といった内容です。一文字も勝手に変更されたくないというライターもいますし、大きく内容が変わらない限り、手離れの良さを優先するというライターもいます。僕は後者なのでそういう融通は利くような調整をします。
掲載月
メディア関連の仕事だとあるのが「掲載月」。書籍の場合は「出版月」などと考えておけば同様です。その作品が世に出たタイミングですね。単純に考えればこれが最も遅くなる請求タイミングです。
下請法を考えるとおかしい、という内容でもまかり通ってる例はありますので入れておきますね。
遅くてもいいや、とこの形にすると、何らかの理由で掲載されなくなって仕舞った場合に請求の矛先がなくなるケースがあります。従いまして、掲載されなかったときにどうするかを明示しておかないと怖いです。
「掲載・不掲載にかかわらず納品日から60日後以内には入金するものとする」
といった内容を含めておくと良いでしょう。
制作者優位は納品月、依頼者優位は検収月
納品と検収の間に月をまたいでしまう場合、請求タイミングが1ヶ月ずれることがあります。フリーランスにとって1ヶ月の入金ズレは大きいので、計画的な業務を行うためにも明確にしておきたいところですね。
制作者に有利なのは納品月で、依頼者に有利なのは検収月(掲載月)です。
お金を得る方は早く得られる方が、お金を支払う方は支払いが遅くなるほうがキャッシュフロー的に優位なのは目に見えている話なので当たり前といえば当たり前。
ただ、どちらにしても、誠意ある納品と誠意ある検収があって、初めてお互いが気持ちよく仕事ができるというものです。請求月の基準をどちらにするにしても、きちんと決めておきたいものですね。
下請法に納品から入金までの最長期間の決まりがあるので把握しておこう
とはいえ、今どきは納品する側のフリーランスもある程度守られています。下請法によって。
公正取引委員会によるガイドブックに、一度は目を通しておくと良いでしょう。本当は条文まで読みたいところ。
- 受領した日から60日以内のできるだけ短い期間に入金する必要がある
- 不当なやりなおし命令の禁止
- 返品・買いたたき・自社製品を不当に買わせる、などの禁止
などなど、決まりがいくつかあります。
入金月が1ヶ月ずれる!?「翌月末払い」「翌々月末払い」
どちらにしても、まず下請法で「納品から60日以内に入金する必要がある」という前提があることを忘れない出ください。
入金タイミングに関するもう一つの重要な決定要素は、請求からどれだけあとに入金されるか、ということ。
依頼主がきちんとした会社であれば下請法を考慮に入れますので、制作物の受領後60日を超えることはまずないとは思います。とはいえ30日と60日では全然キャッシュフローが変わってきますよね。請求タイミングが早くなるに越したことはないのです。
翌々月末払いというのは納品日から数えると60日を超えるケースが多々出てきますので、これからどんどん減っていくとは思います。先方の担当者のうっかりなどで60日を超えている契約が残っているケースもあるので、おかしいなと思ったら下請法を理由に打診してみるのも良いでしょう。
双方が気持ちよく仕事をするために、きっちり決めよう
お金周りの約束をきっちりしておくことは、お互いが気持ちよく仕事をするための重要な要素です。依頼者が作業者を縛るためでもなく、作業者が策を弄して「ズルして得取れ」でもなく、双方のために決めることがらです。
でも、何を決めて良いかを双方が分かっていなければ、気持ちよい契約ができるはずもありません。
実際の支払いタイミングまで想像力を働かせて、請求月と支払いタイミングの約束を決定できるようにしてみてはいかがでしょうか。
▼納期前に前倒しで納品した場合の取り扱いなども出ている「よくある質問」。わかりやすいです。