オンラインイベントツール「Remo(レモ)」でバーチャルコワーキングスペースの試用をしてみたの記事で、Remo Conferenceの試用期間でバーチャルコワーキングスペースを開いてみたことを書きました。今回はリモートワークやRemoの特徴と絡めて、バーチャルコワーキングスペースの可能性などについて記します。
座席の概念が想像以上に面白いオンライン会議システムのRemo。僕が試用したときは2週間に渡って最も高い料金プランを試せました。最も高いプランは24時間・複数日に渡って「イベント」を開催できるもので、バーチャルコワーキングスペース自体を1つのイベントと見立て、試用期間中オープンにしてみたものです。
※現在は試用期間でも最長2時間に制限されているようです。
~ 目次 ~
話さなくても良いけれどその場に居る感覚
実在のコワーキングスペースって、周りに人はいるけれど特に話もせずに作業する空間なんですよね。あれって、近すぎず遠すぎずで、だれかがその場にいる感覚があったんです。
今思えば、あの距離感は絶妙に良かったんですよね。
それがリモートワークになると、オンラインミーティングで全員のカメラ目線を浴びながら会議に参加するか、モクモクと一人で作業するかになってしまい、近すぎず遠すぎずの距離感が無くなってしまっているんです。
これ、ストレスの原因になるのではないかと思いました。
そんなことを考えているうちに見つけたRemoは、オンラインミーティングの仕組みの中に座席という要素を付加し、リアルな場所をオンラインに移行した様相を見せていました。
これはまさにオンラインのコワーキングスペース。どのようになるか試してみたくなったんです。
運用上の工夫
リアルなコワーキングスペースの客として使用したときに運営の方が何をしてくれていたか、を想像して運用しました。加えて、オンラインならではの一工夫を加える工夫をしてみました。
2週間のテスト期間中に主に行った工夫は以下のような内容です。
席種を作る
コワーキングスペースには様々な目的を持った方がいます。モクモクと作業したい方、仲間内で話し合いながら何かを創り上げたい方、休憩時間にリラックスして話す方、夜の時間には何かを食べながら談話を楽しむ方など、さまざま。
それをオンラインコワーキングスペースでも実現させるべく、
- 集中席(マイクオフ)
- 談話席
- 休憩席
- オンライン飲み会席
など作ってみました。
Remoのシステム上で特定の席のマイクをオフにする、という制御はできません。
でも、いらっしゃった方々はテーブル名を見てテーブルの性格を把握し、そこで適した作業をしてくれていました。荒し目的みたいな人が来たらダメですが、普通の方が普通に使いに来てくれるのであれば、この運用で全く問題なさそうです。
受付席を作る
実際にコワーキングスペースを訪れた際には、まず受付に行き手続きします。
オンラインコワーキングスペースの場合、手続き自体はありません。でも、来られた方が軽く挨拶できるような場を、ということで受付席を作り、僕は原則的にはそこに常駐することにしました。ちょっと挨拶をして下さる方などいて、それが完全な孤独ではない雰囲気を出せたのではないかと思います。
適度なタイミングで全体アナウンスをしてみる
3時になったらおやつタイムにしましょう、僕は○時から休憩席に入るのでお話しましょう。
そんな全体アナウンスを流すことで、コミュニケーションを促せるケースがありました。
あるときはエクササイズ席を作り、特定の時間に集まって、YouTubeのエクササイズ動画を流しながらみんなで腹筋をしてみる、といった試みもしています。
こういう集まりはオンラインでもコワーキングスペース的に動いているからこそのもので、Zoomで繋ぎっぱなしにしていて「あ、ちょっと腹筋してくるわ」ってならないんですよね。Remoの良さが出た一例でした。
オンライン飲み会やトークイベントをこの場所で行う
友人とオンライン飲み会やテーマトークで楽しむ会を開いた際、この場を使いました。
試用期間中のRemoは6人テーブルが最大であることから、6人以内の会話になりますが、現実的にオンラインで会話を楽しめるのも6人程度が上限ということもあり、充分ではあります。それ以上いても散漫になり、かえって楽しめないものです。
新たにURLを発行してそこに来てもらう。
常設している場所があり、そこに来てもらう。
オンラインでのやりとりでは、どちらも相手にURLを渡してリンクを踏んでもらうことは同じです。
でも、いつもあるURLで「ここでやるよ」と言えることはホーム感がありますし、もし中長期的に運営するのであれば「いつもの場所」の有り難みのようなものはじわじわと出てくるのではないかと想像できます。
Remoでのコワーキングスペースの運営は他のシステムと連動させて実現できる
RemoではイベントごとにURLが発行されますが、メールアドレスで認証されたユーザーのみがアクセスできる機構があります。簡単な使い方はオンラインイベントツール「Remo(レモ)」でバーチャルコワーキングスペースの試用をしてみたに記してあります。
記憶が曖昧ですが試用していた時期はその制御ができなかったか、よく分からなかったんです。そのため、バーチャルコワーキングスペースの参加者募集はFacebookの友だち限定で行いました。
本格的にコワーキングスペース的な運用をするとしたら、オンラインサロンのような
- 課金システム
- ご参加頂いた参加者とRemo以外で連絡できる手段
が必要になるでしょう。会員から月会費を頂くような運用を想定し、月次で作業をするとして、入退会の処理が出来ないといけなくなります。
Remo単体で完結するとは考えず、他の仕組みとうまく組み合わせると良さそうです。
一例ですが、
DMMオンラインサロン(DMM オンラインサロン - 学べる 楽しめる 会員制コミュニティ)
CAMPFIREコミュニティ(誰でもかんたんに無料で開設! CAMPFIREコミュニティ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー))
noteのサークル機能(サークルとは – noteヘルプセンター)
などと組み合わせれば、ユーザー管理・課金管理の手間が省けそうです。
スポンサー対応は手作業で
Remo Conferenceには最大6つのスポンサーバナースペースがあります。
一度クリックすると一回り大きな画面が出て、その中のリンクボタンを押すと設定したリンク先に飛ぶ、というスタイルのもの。
一回り大きな画面の部分には、画像のほかYouTubeへのリンクを指定し、動画を埋め込めます。
動画が埋め込めるのはインパクトがありますよね。ただし、スポンサーの対応については全て手作業になりそうです。
時間や日程を区切った対応の場合は、広告を張る・外すといった設定も手動です。スポンサー営業から金額やモノのやりとりまで含めて、全てが手作業になると考えておくのが良いでしょう。
Remoでの運営で難しかったこと
新しいことを手探りで試していたこともあり、難しいこともありました。システム的に難しいことも、運用的に難しいこともあります。
重要な機密事項はここでは語らない方がよさそう
これはRemoに限ったことではありませんが、オンライン会議システムの多くは海外の方が海外に設置したサーバーで、原則的に海外の法律に則って運営されているシステムです。個人的な意見ですが、機密性の高い情報はまだオンライン会議システムでは語らない方が良いのかなと感じています。何かしらの機関や安全性を保証する団体が安全な宣言でも出してくれていれば別ですが、今はオンライン会議システムがぼこぼこと登場している時期です。とんだ一杯食わせモノ、なシステムがどこで出て来てもおかしくありません。
Remoがダメだと思っているわけではありませんが、まだよくわからないんです。
Remoの利用規約をざっと読んでみましたが、理不尽なことは書いていないものの機密情報や個人情報がどのように扱われるかは不明瞭に感じた部分もありました。機密情報・個人情報は、これまでのビジネスで活用していたシステムを活用して共有し、オンライン会議システムはコミュニケーションを意識した活用にするのが安全な使い分けになるのではないでしょうか。
Remoのシステムに依存する
挙動が全体的にやや重めである、チャットがたまに消える、などなど、Remoに依存したトラブルの場合はこちら側ではどうしようもありません。
自分のせいではない!と言い切ってしまうこともできるでしょうけれど、オンラインイベントに完璧を求めるユーザーさんが来てしまった場合には、それなりの対応を求められるかもしれません。
また、執筆時点ではモバイルバージョンはベータ版だという位置づけです。
iOSではSafari、AndroidではChromeの利用が推奨されているようですが、利用者からはカメラやマイクがうまく動かないという報告も受けました。原因がどこにあるかまでは追求していませんけれど。
課金システムなどは自分で考える
上にも書いたことですが、Remo自体には参加者・スポンサーに対する課金システムがありません。そこは別システムを使ってね!という割り切りだとは思うのですが、良いシステムを知っていて上手に組み合わせられないと、ロスが大きい運営になってしまいそうです。
この部分はRemoのシステムの理解と、他のシステムとどう連携させるかをよくよく考えなければいけません。
参加者管理を考える
オンラインコワーキングスペースの運営ですから、参加者管理をどうするかを考えないといけません。
個人的な印象ですが、リアルな集まりよりもバーチャルな集まりの方が、マナーの悪い人も集まってくる印象はあります。
URLが公開されてしまったZoomに、わいせつ動画などを流すために乱入してくるZoombombingがありますが、リアルなコワーキングスペースにこんな人が来るでしょうか?
Remoでユーザー管理をするためには、イベント設定を招待制とした上で電子メールで招待を送り、Remo上でアカウントを作ってもらう必要があります。
Remo上でメールアドレスを軸にユーザーのブロックができるようになります。ブロックした瞬間にログイン中のイベントから退出させられます。
ただし、最初にRemoへのユーザー登録を要求されるくらいにはハードルが上がってしまいます。
なんだかんだ運営者が必要
オンラインコワーキングスペースって場所だけ開いておいて放っておけば良いかと、最初はほんのちょっとだけ考えました。
でも、なんだかんだ常駐していることが大切なんだなあと。僕の友だちに限って言えば、あそこに行けばおくのさんが居るよ、という雰囲気作りができることはメリットの1つなんだと思います。
ただし、常駐して、いらっしゃった方とコミュニケーションを取ることに重きを置くと、その分本来の業務的なことがやりにくくなります。
もし本気でオンラインコワーキングスペースを開くのであれば、常駐することに対する対価は必要になりそうです。
利用者からも良い意見を頂けている
画面上とはいえオンライン上の近くに誰かがいるというコンセプトを考えて試験運用したオンラインコワーキングスペースをご理解頂けた方からは、好意的な意見も頂けました。
- リアルなコワーキングスペースの様だった
- 作業にメリハリが付いた
といった声を頂けたこともあり、一人でモクモクと仕事をすることで失われる緩い繋がりや時間・曜日の感覚を維持しやすくなる効果はありそうです。
オンライン飲み会疲れという言葉も早くも生まれてきています。いろいろ理由はあるのでしょうけれど
- 画面の全員が(基本的に)カメラ目線で視線を感じる
- 話さなければいけない妙な責任感
- 逆に話さない時間が長くなったときに席を外しにくい感
みたいな所があるんじゃないでしょうかね。
Remoによるインターフェースで、ちょっと他の席で別のことをしてくるという動作を採りやすくなったことと、その仕組みがあるが故に会場内で自由にしていいですよ、というルールの効果で、オンライン飲み会疲れも少なそうです。
わいせつ動画を流すような身勝手はダメだけれど、今日はもうこれで失礼するね、と自由に言いやすい空気があると疲れにくいですよね。みんなもう少し何かに囚われずに、軽く解き放たれながら縛られていると良いんですよ。
月額950ドルを捻出できるかどうかがカギ
いろいろ振り返り、良い所と悪い所を見てみましたが、これを含めて月額950ドルという一番高額なプランを契約できるかどうかが、Remoの活用のカギなのだと思います。
自分がFacebookやnoteなどでRemoの記事を見つけ、読んでいる範囲では、お試し期間中に盛り上がったものの、その後、ビジネス化している人が見つかりません。
勝手な想像では、みんな料金表を見て撤退しているのではないかと。なんとかスポンサーを見つけて開催できたら、と考えているところです。