楽天が昨年に買収した会社の製品だった製品・KOBOを日本で発売して数日経つ。陸上の王者、ウサイン・ボルト並の好スタートを切ったかと思えばさにあらず、購入者のあまりの低評価と、それが原因なのか楽天自身が評価ページを事実上閉鎖するという事態に陥っている。
巷の評価では、ハードウェア自体の性能、日本語対応の不完全さ、セットアップのためのサーバーのつながりにくさ、電子書籍リーダーというハードウェアがiPadやAndroidタブレットと異なるが故の特徴の違いが利用者に理解されていない、といった、ハードウェア・ソフトウェア・サービスの各方面から厳しい内容のものが多い。
その辺りの詳細や電子書籍リーダーについての評論については以下のこれらのリンクに任せるとしよう。
楽天の「コボタッチ」、不具合や不満相次ぐ 新発売の電子書籍端末 - MSN産経ニュース
楽天「Kobo Touch」のスタートダッシュと今後を考える (1/2) - 電子書籍情報が満載! eBook USER
まだ諦めない!kobo Touchを使いこなすテクニックまとめ - NAVER まとめ
暇人\(^o^)/速報 : 楽天の電子書籍『kobo』大炎上 「英語しか使えない!」など不具合、低評価殺到→レビュー欄が閉鎖 - ライブドアブログ
話題の電子書籍端末はどっちが「買い」? 「kobo Touch」と「Sony Reader」を徹底比較:PC Online
私が個人的に得た感想及び電子書籍リーダーの今後の予測は以下の通りだ。
・メリットが軽さしかない
何冊もの本が一つのハードウェアに収まることをメリットとして謳うことが多いが、人は外出するときには一冊の本しか持ち運ばない。ということは、外出時における電子書籍リーダーのメリットが複数書籍を同時に持ち運べることだとしたら、それは実は大したメリットにはならない。如何に自宅の書籍を一つのハードウェアに納められるかの方が大切だが、それには容量的に心許ない。
・白黒、低解像度の電子ペーパー
電子ペーパーという用語が闊歩しているが、白黒、せいぜい濃淡を表現できる程度では小説やちょっとしたビジネス書の代替にしかならない。
我々が電子書籍として有効に利用するためにはフルカラー、高精細の表現力が必要だ。内容の複雑な百科事典的な書籍を置換できるようになった時こそ電子書籍の本領が発揮出来ると考えるが、今の専用端末にはそれを期待できない。
・マルチメディア表現力が皆無
前の項目と同義だ。電子書籍を電子書籍足らしめるのは、その表現力だ。例えば鳥の鳴き声、例えばサイレンの回り鳴る様、例えばネクタイの結び方。このような情報が音声や動画で表現力出来るところに、真の電子書籍のメリットが見えてくる。しかし現状、このメリットを専用端末で得る事はできない。
・揃わない足並み
電子書籍リーダーを発売する各社で情報を完全に共有することが難しい。SONYのReaderでダウンロードしたデータを楽天のKOBOで読めるか。その逆はできるのか。
読みたい本ごとにリーダーのハードウェアを取り替えるとしたら、ナンセンスだ。さらに市民はそんなにリーダー端末を何種類も買ってくれない。
このような現実をみるにつけ、現時点では、例えサイズが大きく重くても、iPadやAndroid Tabletのような表現力豊かなハードウェアで提供するリーダーアプリの方が遥かに電子書籍用端末として優れていると感じるのだ。
要は、電子書籍リーダーのハードウェアとして世に出すには時期尚早、ということだ。リーダーの機器を販売している各社は、タブレット端末、スマートフォンを良い所を盗んで製品化していく必要があるだろう。
条件が揃えばこのハードウェアが広く認知される可能性はあると思う。だが、今はダメだ。性能面は時が解決するとしても、各社が足並みを揃えない限りは、少人数の軍隊が大部隊に各個撃破されるがごとくiPadらに潰されて行くだろう。それを見るのは偲びない。
このような状況の中、楽天はサービスや利便性、年配者へのわかり易さの面で不十分な電子書籍リーダーを発売してしまった。これは勝ち目の無い戦と言っても過言ではない。改善をマッハのスピードで行わなければならず、それが無理なら撤退した方が良いとさえ思う。無理に意地を張って、いずれやって来る黒船・Kindleに叩きのめされるのであれば上手い出直しを図った方が良い。ただしKindleに勝てても、iPadなどに勝てる保証はどこにもない。ガジェット好きは除き、一般の消費者は似たようなものを何種類も揃えない。すでに数多く出回っているiPadで本が読めればそれで読み、わざわざ新しいガジェットなど買わない。
以上のように、私個人は現在の電子書籍リーダーとりわけKOBOの前途は多難でありと考えている。現代の楽市楽座・楽天を築いた三木谷氏がこの難局にどう立ち向かうのか、興味深く見守って行きたいと思う。
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