黒田官兵衛

【 #軍師官兵衛 】第38話 不信

2014/09/28

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豊前(おおむね大分)で問題のおこっている宇都宮一族を成敗するよう豊臣秀吉さんに命じられた黒田官兵衛さん。使いも兼ねているのかな?加藤清正さんにもそういわれて、官兵衛さんは苦渋の決断を迫られます。

その一方、戦に出ていた官兵衛さんの留守を預かっていた息子の黒田長政さんが宇都宮の当主、鎮房さんを独断で暗殺していたところでオープニングが終了。

中津では後藤又兵衛さんが長政さんに諫言します。

「豊前での黒田の信用は地に落ちました!黒田家末代までの汚名となりましょう!」

旧領主をだまし討ちにしたのですからね・・・。そういわれても仕方ない。

まあ、長政さんは長政さんで「黒田家がなくなっては仕方ない!」

「このこと殿は!」

と又兵衛さんが食い下がりますが

「知らぬし、知らなくてよい!」

と話します。ここで又兵衛さん、長政さんの真意を読み取りました。

泥をかぶるつもりなんですね。

一方、戦に出張っていた黒田の本陣では、長政さんが成敗したことが伝わりました。
さ、そこで出てくる問題は、長政さんが成敗した鎮房さんの嫡男・宇都宮朝房さんは、官兵衛さんが連れて出てきていること。朝房さんはまだおやじや一族が成敗されたことを知りません。

人質まで殺せと言ってる秀吉さん。さすがの官兵衛さんも、とてもお困りの様子です。

中津城では鎮房さんの娘・鶴さんが牢屋に入れられています。
「相すまぬことに」と謝っているのは官兵衛さんの奥さん・光さん。

鶴さんはそもそも反黒田。

「父をだまし討ちにした黒田の詫びなど受けぬ」

と牢の中でもキッとした表情です。

そなたを殺すようなことはさせぬ、と約束した光さん。人質まで殺せという秀吉さんの命がある以上は、本来は殺さなければいけない人なのですが、どうするのでしょうか・・・。

城井谷攻め

長政さんは宇都宮の本拠だった城井谷を攻めることを決意します。大阪城に長くいて最近の秀吉さんのこともわかっている長政さん、仕方ないとはいえ決意は固く。

「殿下は罪なきものまで皆殺しにせよと仰せですか!?」

と咎める光さんですが・・・。

個人的には豊臣秀吉はこのあたりからすでにねじが外れてしまっているようなイメージがあります。勝ち目を判断せず攻め入ろうとした朝鮮出兵が最たるものではあるのですが、九州攻めのあたりから

「一生懸命当たっても勝てるかどうかわからない」

相手がいなくなっているわけですよね。これまで信長のご機嫌を伺ったり、毛利との外交に苦労したり、そういうタガが外れてしまって、ダメな部分が出てきてしまっているような気がします。

人間、多少は苦労しているくらいの方がいいんですかね。

「人を生かして使うのが黒田家の信条ではなかったのですか!」

光さんの言葉、長政さんは「んなことわかってるんだよ!」という表情で聞いています。

朝房始末

官兵衛さんは朝房さんの始末を決意します。母里太兵衛さんに朝房さんを呼ばせました。

誅されることなどつゆ知らず、朝房さんがやってきます。

官兵衛さんが杖を床に一突き。それが合図で、官兵衛さんらがいる場所が外界から遮断されました。官兵衛さん・家老三人、それに朝房さんだけ(供回りはいるけれど)の空間が出来上がりました。

さすがに朝房さん、同様します。

栗山善助さんが口火を切ります。

「朝房、心して聞け」

鎮房さんが秀吉さんの命により成敗されたこと、朝房さんも死んでもらわなければならないこと。そこで官兵衛さんは

「腹を切れ」

と指示します。

ここは黒田官兵衛の温情を示したシーンだと理解したいですね。武士にとって他人に殺されるのではなく、切腹するということにはある種の名誉があります。もし切腹したら、秀吉には成敗したと報告するものの、宇都宮家の名誉をいろいろ守れる何かを対策できたのかもしれませんね。

状況を呑み込めない朝房さん。

「本領安堵を反故にしたのは秀吉ではないか! ハナから我らを滅ぼすつもりだったのか!」

もう秀吉さんのことを「殿下」とすらいいません。

脇差を抜きますが死にきれないのか、官兵衛さんに突進しようとする朝房さん、それは家老たちに食い止められてしまいます。

「殺せ!」

朝房さん、切腹を受け入れません。

仕方ないですね・・・。官兵衛さん、朝房さんの頬に手を当てます。顔は厳しいけれど、本当は俺もお前を殺したくないんだよ。そういってるような気がする。

杖を捨て、刀を取り、朝房さんの首筋に突き立てました。さよなら、朝房さん。

井上九郎右衛門さんは涙目。太兵衛さんも口惜しさ満点の表情、善助さんはもう涙を流してしまっています。官兵衛さんの目からも涙が。血涙を流しているかのようです。

黒田家最大の悲劇とも言える宇都宮家始末、大筋は終了です。

色ボケ

そんな悲劇をよそに大阪城では、茶々姫のハートをワシヅカミするのに必死な秀吉さんの姿。当時は珍しい甘い洋菓子で気を引こうとしています。まるかったけれど、カステラっぽかったかなあ。

散々の「茶々、茶々」の呼びかけにも返事をしない茶々姫を見かねて、石田三成さんが提案します。

「恐れながら、城はいかがでございましょう」

ああ、将来の淀城のことですね。

お、城には心を動かされた茶々さん「そこで、殿下のお子を産みとう存じます」。

あー、色ボケな関白殿下、大喜びです。

そこに長政さんからの知らせで宇都宮家を打ち取ったことが分かった秀吉さん。

「(官兵衛は言うことをなかなか聞かないが)長政はやったか!」

とさらに大喜びです。

鶴、逃がす

宇都宮を討ったことを秀吉さんが喜んでいることが官兵衛さんにも届き、豊前を引き続き黒田家で管理してよいこととなりました。

豊前での信用も、思いのほか保たれた、長政さんが独断で行った成敗も幸いしたということらしいですね。

官兵衛さんは憤懣やるかたないご様子。もう、秀吉さんから心は離れてしまっているような印象を受けますね。

豊前で留守を預かる長政さん、台所で奥さんの糸さんを呼びます。

「無事のお戻り、おめでとうございます」とは言うものの、飯のしたくは出来ていないと言ってます。奥の女中さんたちは長政さんのしたことに対して愛想をつかし、お世話をしたくない、ということだそうで。ストライキですね。

「くだらぬ・・・」

といった長政さんに

「なにがくだらないのですか?」

と出てきたのは光さん。

いまだ囚われの鶴さんを牢から出すよう指示します。

牢から助けたら秀吉さんに罰せられることを言う長政さんですが、逃げられた体にすればよいというアイディアを提供します。


カギをあけ、牢を出るよう鶴さんに話しかけたのは又兵衛さん。光さんが長政さんに掛け合ったことまで伝え、鶴さんが逃げたということにしよう、ということまで説明します。

そして光さんから託された、食料のような荷物まで渡します。

情けは受けぬ、という鶴さんですが又兵衛さん、渾身の説得。

恥を忍んでも生き残るのだ。死んでは仇は討てぬぞ。お鶴殿、生きよ。何が何でも生きるのだ。生きてさえいれば、光も見えてくる

このセリフの中に、又兵衛さんの何らかの不信感を感じるのは僕だけでしょうか?

鶴さん、荷物をもって黒田家を去ります。

肥後の一揆を鎮圧して中津城に戻った官兵衛さんに、長政さんが勝手な成敗を謝罪します。鶴さんは勝手に逃げたということにし、去りますが、官兵衛さんが中津にいたら同じことをしていただろうと語っていました、と光さんが説明してくれました。

黒田一番の辛い戦は、これで決着ですね。

肥後始末

肥後は二つに分け、一つは小西行長さん、もう一つは加藤清正さんに分け与えることにした秀吉さん。

加藤清正さんを我が子のようにかわいがっていた秀吉さんの奥さん・おねさん、それを聞いて大喜び。豊臣家は嫡男がいないから少しでも近いところの人たちを重用しなければなりませんからね。

ここで秀吉さんがまた壊れたことをおっしゃる。

「人は、将棋の駒じゃ。それをこのわしが自在にあやつる。まるで、神のように・・・。上様も、それを面白がっていたに違いない」

アカンわ。秀吉さん。


謹慎していた元の肥後の領主・佐々成政さんは石田三成さんに切腹を申し付けられました。

「秀吉の手の平で踊らされていたのだな」

豪快に笑って、佐々成政さん、切腹。

切腹の翌日、大阪の茶室に呼ばれている官兵衛さん。秀吉さんに

「官兵衛、命拾いしたな」

と言われます。成政さん切腹の報告は三成さんが。

肥後を加藤清正さんと小西行長さんに与えた理由を官兵衛さんに明かす秀吉さん。

明(中国)攻めの構想で、対象を小早川隆景さん、軍師を官兵衛さん、先鋒を清正さん・行長さんにやらせようという肚なのですね。

「信長さまが成しえなかった夢を、この秀吉が成し遂げるのじゃ!」

勘違いの増幅が甚だしいですぞ、秀吉さん。高らかに笑うけれどさ。

「殿下!天下泰平は目の前ではございますが、長い戦乱で民は疲弊しております。何卒、しかと民の姿を見ていただきとうございます」

「そのようなことはわかっておる」

官兵衛さんに何か言われるだけで腹が立つように出来上がっちゃってる秀吉さん。

「天下を収めたのち、海を渡り明を攻めるのは、殿下の悲願でございます」

三成さんが言うのに対しては

「控えよ!三成どの!!」

強い口調で制する官兵衛さん。

三成さんの方をへ向き直し

「今わしは、殿下に申し上げておる。口をはさむな」

そして再度秀吉さんの方を向いて

「殿下、なにとぞ、お考え直しください!」

秀吉さん、さらにご立腹で

「おぬし、このわしの夢にケチをつける気か」

お茶を点てていた千利休さん

「耳の痛いことを言ってくれる方がおられるうちが華でございます」

これも秀吉さんは気に入りません。

「利休よ、わしは黒茶碗が嫌いじゃ」

「殿下にも、いずれその良さがおわかりになります」

茶碗をけっ飛ばすのをぐっとこらえた秀吉さん、三成さんを従えて茶室を出ていきました。

なにか亀裂がはっきりしましたね。少なくとも利休さんと官兵衛さん、三成さんのことは大っ嫌いみたい。秀吉さんにも愛想をつかしているっぽい。


大阪城内で官兵衛さんのご挨拶を受けたおねさん。暑気払いの瓜を馳走します。

長政さんも瓜が好きでした、というおねさん、宇都宮の件を心配したことを伝えつつ、長政さんの成長を喜びます。

おねさんの心配ごとは豊臣家について。急に大きくなりすぎた豊臣家、秀吉さんも天下を取ってから人が変わった、と嘆いています。家中をまとめる暇もなく大きくなってしまった豊臣家、官兵衛さんが頼りですよ、とおねさんが誠意をもって語ります。


清正さんは25万石の出世。肥後の加藤家、豊前の黒田家。そう遠くない土地なので仲良くしていきたいという宴会が開かれています。

清正さんの心配は茶々-石田三成ライン。
そして、清正さんは長政さんや福島正則さんに育てられた「おねさん派」。秀吉の配下の中でも派閥がいろいろできつつあるんですね。

「豊臣家のため、この命捨てる覚悟はできております!」

と清正さんに熱く語る長政さんを、長政さんにずっとついている又兵衛さんはとっても複雑な表情で見つめています。

家康と官兵衛

九州が一通り片付いていたころ、駿府(静岡)の徳川家康さんは小田原の北条家に対し、秀吉さんへの上洛を促していました。まあ北条さん、そんなことは聞きません。

家康さんや家康さんの家臣は秀吉さんに心からの臣従はしていません。

「北条と共倒れにならないようにしなければ」

などと軽口も叩いていますが、家康さんはとりあえず上洛してくる、ということで。

名目は、家康さんの奥さんで秀吉さんのきょうだいの旭姫さんが、お母さん(=秀吉さんのお母さんでもある)大政所さまの病気お見舞いに行きたいというのに付き添うということ。でも家康さんは、

「会うてみたい男がおる」

その、会いたい男というのは、官兵衛さんでした。

千利休さんを通して茶室で三人。

「名うての軍師どのに会ってみたかった」

という家康さんに対し、小牧長久手の戦において、唯一秀吉さんに戦で勝った方にお会いしてみたかった、と返す官兵衛さん

「お主のような軍師がその戦にでておらずついておった」

と褒める家康さんに対し、「間もなく訪れる泰平の世になれば軍師など無用の長物」。

泰平の世が来ると思うか?

と家康さんが訪ねたときの官兵衛さんの答えが

「豊臣の天下を奪い取ろうとするものが現れぬ限りは・・・」。

「そのような大それた野心を抱くものなど、おらぬであろう」。

ははは、と笑う二人。野心見え見えの(笑) だぞ。

「先日、こんなうわさを耳にした」

話題を変えた家康さん。

秀吉さんが、ワシが死んだらわしの次に天下を取るのはだれだとおもう?とお伽衆(秀吉さんの話し相手を仕事にしている人たち)に尋ねた秀吉さん。

前田どの、家康どの、毛利、上杉という答えに違うと言ってたそうで・・・。

どうやら、それが黒田官兵衛さんだということだ、と秀吉さんが伝えていたそうです。

この話を聞いて「超やべえ!」という表情を官兵衛さんが見せたところで、今回は終了です。

これは、秀吉が官兵衛をほめているわけではありません。
一見褒めているように見せて、一番警戒しているのが官兵衛だということを官兵衛は聞いてしまったのですね。

この話はよく出てくる話で、この話を聞いた官兵衛は隠居を決めた、という流れになっています。

そして、そろそろ

茶々-石田三成 のラインと

おね-(徳川家康・千利休・)加藤清正・福島正則・黒田長政のライン

という豊臣家の派閥争いの構図が描かれ始めましたね。このラインが、基本的に関ヶ原の戦いにつながっていくわけです。

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