徳川家康さん・千利休さんと茶室でお話し中の黒田官兵衛さん、豊臣秀吉さんがお伽衆との与太話で、
「自分が死んだら次の天下は黒田官兵衛じゃ!」
と言っていたことを聞かされます。
「上に立つ器量がある、そして黒田にはそうそうたる家臣がついておる。奴に12万石しか与えなかったのは、天下を奪われるからじゃぁっはっはっはっは!」
半ば冗談、でも半分本当な感じですよね。
「官兵衛殿は私の野心を不安しておりましたが、殿下が恐れておられるのは、ワシではない・・・。お主じゃ。」家康さんの言葉にどえらい考えさせられる官兵衛さんのアップでオープニングです。
~ 目次 ~
懐妊
秀吉さんと石田三成さんが、茶々姫の元に走ります。
そう豊臣家に、吉報です。茶々姫がついに懐妊したのですね。
「必ず、男子(おのこ)を産んでくれ」
茶々さん
「男子に決まっております」
と自信満々。
秀吉さんは振り返って
「三成、淀城の普請を急げ!」
三成さんはそつがない。
「これで豊臣家も安泰でございます」
もうとっくに進めてるよ、っていう。
九州・中津にいる官兵衛さんの元にも、茶々姫懐妊のニュースが届きました。
嬉しそうに語る官兵衛さんの奥さん・光さんですが、官兵衛さんは浮かぬ顔です。そのココロを・・・語る前に舞台は大阪城へ戻ります。
秀吉さんの正妻・おねさんにご挨拶に来た茶々さん。今は京都の聚楽第にお住まいです。
「京都の気候が良かった」
「わざわざ挨拶に来るには及ばぬものを」
「そういうわけにはまいりませぬ」
「くれぐれも、体をいたわるのですよ。もはやそなた一人の体ではありませぬ。」
「わかっております。ここに居るのは、殿下のお子。豊臣家の跡継ぎを、無事に産んで見せまする。
母の気鬱はお腹の子に触ると聞いております。それゆえ、これからは誰に気兼ねすることなく、気ままに過ごすつもりでおります」
恭しく頭を下げて去る茶々さんですが慇懃無礼な感じ。おねさんのおつきの人も
「今までどなたかに気兼ねしていたおつもりでしょうか?」
とチクリ。
おねさんも、「は、はは・・・」と笑いますが、目は笑っていないようで。
家督
所は黒田の中津城。主だった家臣をみな集めました。
何の御用かと思ったら
「長政、前へ」
官兵衛さんと嫡子の黒田長政さん、家臣の方を向きます。
「わしは隠居し、長政に家督を譲ろうと思う」
動揺する家臣のみなさん。
家老1・栗山善助さん「何故ですと」
家老2・母里太兵衛さん「隠居・・・」
家老3・井上九郎右衛門さん「何故でござる」
官兵衛さんが答えます。
「天下が近づくにつれ、殿下は疑り深くおなりになられた。そして、こたびの茶々様のご懐妊。守るものができると、人は一層疑り深くなる。今の殿下は、お子に禍をなすものを取り除くためなら、どんなことでもする。
わしが次の天下人とおっしゃったのはお伽衆相手の戯言ではあるが、殿下の胸には疑いの種が埋まっている。
それは、いつ芽吹くかわからん。黒田が生き残るにはわしが隠居し、その疑いの芽を摘み取っておく必要がある。
それに、お前たちのこともある」
「殿下は、黒田には優れた家臣が揃っておる、と羨んでおられました」
というのは善助さん。
「われらは命を賭して殿下をお支えしてきた。今やそれが殿下のお疑いの元になっている」
いつも冷静な分析をする井上九郎右衛門さんです。
我に返って「父上、お待ち下さい」
というのは長政さん。これまで「ぽかーん」だったのでしょうか?
「家督を私に譲るなど、まだ無理でございます」
「長政、初陣以来6年、おまえは十分に場数を踏んできた。家臣たちも支えてくれる」
官兵衛さんは問題なさげに。
家臣も「若」「若、問題ありませぬ」と大激励。
「長政、すべては生き残るため。よく考えるが良い」
官兵衛さんはそう言い聞かせました。
夜。長政さんは奥さんの糸さんとお話します。
「おめでとうございます。殿に力が無ければ父上が家督を譲るなどとおっしゃるわけがありません」
という糸さんですが、
「力か・・・。じゃあ、先の戦(宇都宮鎮房さんとの戦)で家臣を大勢死なせた。そのような男に、父上の変りが務まるわけがない」
「そのような弱気で何とします! 殿が家督を継ぎ、お家を繁栄させることで、死んでいったものも報われます。」
といって自分も酒をいただきます、とケラケラっとする糸さんです。長政さんはあくまでもプレッシャーしか感じていないご様子で
「わかっておるのか?よいか、お前は黒田家当主の妻になるのだぞ!?」
「そんなことわかっております。何とかなりましょ。」
糸さんの方が肝っ玉がすわっています。
「そういうところに惚れたのでしょ?」
あくまで強気な糸さんです。
似ておる
「似ておる」
官兵衛さんが光さんに言います。
「何がでございますか?」
聞き返す光さん。
官兵衛さんが思い出しているのは、昔仕えていた小寺家の当主が疑いを持ったことから、官兵衛パパから官兵衛さんに家督が譲られたことでした。
小寺家に世継ぎが生まれ、主君・小寺政職さんが疑い始めたんですよね。
官兵衛さんも「勤まらん」と思ったらしいですね。父上は高き壁であった・・・と回想しています。
「長政にとっても同じ。殿は、険しい山なのでございます。道しるべを示してやらねば、長政には登れますまい」
「自ら道を探さねば、本人のためにはならぬ」
この夫婦もお酒を酌み交わしています。
拒否
「隠居じゃと?」
大阪城で報告する官兵衛さんに秀吉さんはびっくり!
「藪から棒に何を申す!訳をいえ、訳を!」
「これまで、殿下の天下統一を夢見てお仕えしておりました。しかし、今や毛利・島津・徳川も殿下に従い、残るは関東の北条を下すのみとなりました。殿下子飼いの若い武将も育ち、三成殿をはじめ、お奉行方がしっかりと殿下をお支えしております。もはや、それがしの出る幕はございませぬ。」
何をいう!?とでもいいたげな顔で秀吉さんんが歩み寄ります。そんなことを意に介さず官兵衛さんは
「倅・長政はもう21歳。いつ家督を継いでもおかしくない年でございます」
「官兵衛よ!」
秀吉さんの声が大きい。
「お主の心が読めたぞ。お伽衆との話を聞いたな?」
笑ってみせる秀吉さん。
「あれは戯言じゃ。先走るな!官兵衛、わしはおぬしの隠居など、絶対認めんぞ!
お主はまだ43ではないか。九つも年長のこのわしが天下のために働いているというのに、おぬしがこのわしより先に隠居など、断じてゆるさん!」
さっきまで笑っていたのにいきなり怒ってます。
「そこを曲げて、お願いいたしまする」
「曲げん!この秀吉、断じて曲げんぞ!」
官兵衛さん「こりゃ、今日は無理だわ・・・」
という表情です。
廊下に控える三成さんは、官兵衛さんの隠居を許さなかった秀吉さんにご不満のご様子。
「もはや黒田殿のような軍師がいなくとも、豊臣の天下は揺るぎませぬ!」
でも秀吉さんは、憎らしくも思う、と官兵衛さんのことを評しつつも
「三成、これ以上、わしと官兵衛のことに口をだすな!」
と叱責しています。頭を下げた三成さんですが、青筋がものすごい勢いで浮き出してますよ。
怪しい三角関係ですねぇ・・・。
駿府の徳川家でも、官兵衛さんが隠居を願い出たことについて主従で話し合っています。
まあ家康さんは、お伽衆の件を官兵衛さんに伝えた張本人。なぜ隠居を願い出たのか、すぐに理由が分かったみたい。
「官兵衛め、先手を打ちよった。関白にあらぬ疑いをもたれる前に隠居を申し出たに違いない」
「官兵衛殿が隠居をすれば関白のそばにあって間違いを正すものがなくなり、豊臣の屋台骨が揺らぐことにもなりましょう。」
「当家にとっては、黒田殿にはやく隠居をしてもらいたいものですな」
黒い会話してますよ徳川家は。
権力
秀吉さんは奈良の大仏にも勝るものを京都に作り、権力を誇示していました。
茶々姫にも日本各地の海産物を茶々姫にごちそうとして出します。
どんな権力も、茶々姫には
「食べつけぬものを食べてこの子に触りがあっては」
と拒否すると、さっきまで進めてた海産物を即否定して見せたり。
秀吉さんは、茶々姫に踊らされてる感がものすごい。
「殿下、ここは落ち着きませぬ。早く淀の城に移りとうございます。」
後の、淀君である。
非道
ある日、聚楽第の壁に落首(いたずら書きの歌)がされていました。
大仏の
功徳もあれや
槍かたな
くぎかすがひは
子宝恵む
当時の豊臣秀吉は大仏を立てるために刀狩(庶民から武器を召し上げる)を進めて庶民から批判を浴びていたようです。その批判と、そんな結果得られた大仏で子宝に恵まれるなんて、ああめでたいねえ、という皮肉です。
ただ、この歌が実際に張られていたかはいまいち不明だそうです。
ささたへて
茶々生い茂る
内野原
今日はけいせい
香をきそひける
内野原は、聚楽第がある場所です。イコール、茶々がいるところ。
けいせいとは傾城、遊女のことで、京都では遊女を秀吉が禁じたにも拘わらず、聚楽第の中では女どもが秀吉の寵愛をうけんと色(香)を競いあっている
という皮肉なんですね。
まあ、人気なかったんでしょうねえ・・・
これを聞いた秀吉さん、大仏のことはまだしも茶々のことを!と大激怒し、なぜか身内の粛清を始めてしまいました。
処分をうけたのは100人以上。
仕事をしなかったという城門の番人17人は拷問の末死罪、疑わしいと思われた100人以上も処刑されたということで、それを秀吉さんの弟の豊臣秀長さんから聞いたおねさんが
「このままでは豊臣家は・・・といって絶句してしまいます。」
いかねばなるまい
おねさまから書状が届きました
と光さんからお手紙を受け取った官兵衛さん。大阪へ呼び出されたようで。
「おね様は長政の命をお救い頂いた黒田の恩人」
光さんが言えば
「その恩人の頼みとあらば、いかねばなるまい」
と官兵衛さん。
そして聚楽第の秀吉さんの元へ行きます。100人以上が死罪になっているという情報も携えつつ・・・。官兵衛さんと光さん、命がけで秀吉を諌めにいく覚悟をします。
ずかずかと入ってくる秀吉さん・三成さん。
官兵衛さん、あえて強気に出ていきます。
まず鼻で笑って見せ
「人は子供ができると、ここまでモウロクするとは思いもよりませなんだ」
「なんじゃと!」
と秀吉さんは怒りますが
「今殿下のお子を、世の人々は待ち望んでおられましょうか?」
疑問文で投げかけます。「お控えなされ」という三成さんには無言で手を出して制し、
「先の落首の件、はなはだよろしくありません。咎人が誰だか分らぬゆえ、疑わしきものをまとめて殺すなど言語道断。
殿下はこれまで、人を殺さずに、味方に取り込むことで信長公の死からわずか数年で天下を手にいれなさいました。
されど此度の一見で、人々の心は殿下から離れてしまいました。茶々様のお子を皆が待ち望む世にしなければ、豊臣家の先行きは危のうござる!」
三成さん「黒田殿無礼でござるぞ!」。
そして近習も腰を上げ、成敗に備えます。
官兵衛さんは意に介さず、
「殿下はもう齢50(実際は52歳、人間50年とうたわれていたような時代の50歳)にござる。お世継ぎが長ぜられるころ、すでに殿下はお亡くなりかもしれません。
その先も、豊臣家の天下は長く続きましょうか!?」
官兵衛さんのまわりをぐるぐる回りながら睨めつける秀吉さん。
「生まれてくるお子のためにも、とくと考えていただきたい」
立って見下ろす秀吉さんを、あぐらをかいた状態で見上げながら睨めつける官兵衛さんです。
やがて秀吉さんが
「官兵衛・・・」
とドスの効いた声を出しながら座ります。
そして、なぜかの笑み。
「だからこそわしは、官兵衛を手放せんのじゃ!」
「あいわかった。咎人探しはもうやめじゃ。世の中をぱぁっと明るくし、このわしの子の誕生を祝ってもらえるよう、取り計らう」
秀吉さんの決定は、「皆に金を配る」ということ。さっそく三成さんに指示します。
どうも秀吉さん、金でしか解決できないヒヒおやじになってしまっていますね。以前の小寺のバカ殿の劣化に近づいてます。
どこか行っちゃった秀吉さん。
「余計なことを・・・」とでも言いたそうに官兵衛さんを睨みつけながらさる三成さん。
命がけの諫言がとりあえず通って脱力しつつ頭を下げている官兵衛さん。金による解決にはどうも、といったところでしょうかね。
あらためて隠居をやめよ、という秀吉さんにも固辞する官兵衛さんですが、秀吉さんは次の提案をします。
「家督は長政に譲ればよい。じゃが隠居は認めん。黒田の当主としてではなく、一人の男としてわしに仕えよ」
これには官兵衛さんも了解するわしかありませんでした。
喜んで見せる秀吉さんですが、どこまで本当に喜んでいるのかいまいち不明ですね・・・。
誕生
天正17年(1589年)5月27日、淀城に吉報です。
茶々姫がついにおとこの子を産みました!秀吉さん、一度捨てられた子は丈夫に育つという言い伝えがあることから「捨(すて)」と名付けます。
この吉報はおねさんに伝わり、おねさんも跡継ぎの誕生にほっとします。侍女の人は、茶々姫改め淀君が三成さんを使って権勢をさらに強めるのではと懸念します。
従五井下
「黒田長政 従五位下 甲斐守に推挙する」
三成さんが読み上げますと
「豊臣家の御ため、身命を賭してお仕え申し上げます」
殊勝に答える新たな黒田家の当主・長政さん。官兵衛さんもこの時ばかりは嬉しそうです。
甲斐守に任ぜられた長政さんは朋輩の福島正則さんとともに、育ての親のおねさんにもご挨拶。晴れ姿をご披露します。
「これもすべて、おかか様と半兵衛さまのおかげ。あのとき命をお救い頂いたからでございます」
御礼を改めていう長政さん。黒田の家と大阪のおかかさまをお守りいたします。と宣言します。
おねさんもこのころから「北政所(きたのまんどころ)」さまと呼ばれるようになったみたいですね。
「気持ちは嬉しいけれど、家中に徒党を組んで争いは起こさないでおくれ」
と感謝の中に釘を刺しますが
「徒党を組むのは我らでなく三成でございます」
と言い切っちゃったのは福島さん。淀殿が世継ぎを産んでからはさらに大きな顔をしているんですって。
北条家、登場
徳川家康が訪れているのは小田原の小田原城。親戚の北条家へ、豊臣家への上洛を促しているようです。
北条の当主、氏政さんは、小田原城が上杉家や武田家との戦争でも落ちなかったというのを頼りに強気で断ってしまいます。
家康さん
「ならば、覚悟はできているようじゃな」
と言ってしまいます。親戚ながら、豊臣家の家臣としての交渉だったんですね。
いよいよ小田原攻めですねえ、と、隠居した大殿・黒田官兵衛さんと、善助さん・太兵衛さん・九郎右衛門さんがお話しています。
「この先も大殿の隠居は認められそうもありませんな」
「お前たちの隠居も、まだまだ先じゃ。これからも戦は続く」
「われら、どこまでも大殿にお供いたします」
と、「大殿」とその主従として、今後の戦に思いを寄せる官兵衛さんらの会話で今週は終了。